いわて連携復興センターでは、4月16日に発生した九州地方を中心とする震災を受け、
日々支援活動に当たられている特に現地の支援団体の皆さまに向けて、
東日本大震災において復興支援活動に関わった岩手県内の団体より、
実際に支援活動を行った上での教訓やノウハウ等を寄稿いただき、今後本サイト上から発信してまいります。
なるべく現地の支援フェーズの移り変わりに合わせた内容を掲載してまいりますが、
いち早く配信し活用していただきたいと考え、
記事作成ができた順に掲載していきますので、何卒ご容赦ください。
第一弾は、緊急期、民間団体として主に『物資支援』にあたったSAVEIWATEさんからの寄稿です。
【九州地震における現地で支援活動を行うNPO等の皆さんへ】はこちら
http://www.ifc.jp/news/notice/entry-1821.html
【一般社団法人SAVE IWATEとは】
震災の2日後、盛岡市在住の有志6人で「SAVE IWATE」を設立。被災者の安否情報の収集・整理・提供、生活相談、物資支援、県内外からのボランティア受け入れ等を行う。
平成24年2月法人化。現在は、盛岡市から受託した「もりおか復興支援センター」を運営し、盛岡市内の内陸避難者支援を行っている。その他、自主事業として、市民やボランティアの被災地支援等のコーディネート、首都圏と沿岸のマッチング等手仕事による被災者の収入支援も行っている。
私どもSAVE IWATEでは、東日本大震災発生から約2年、沿岸被災地と、内陸避難者に物資の提供を行ってきました。避難生活の状況が変わるにつれ物資の要望も変わります。
この度の平成28年熊本地震では多々、東日本大震災と状況の違う点がありますが、共通して求められるであろう物資を中心に、当時の物資支援状況を振り返ってみます。
まず発災2週間までは、着の身着のままで避難してきたという状況のもと、ありとあらゆる生活必需品が求められました。
まず、食糧、水といった「食」の部分です。これらは、日もちする米や缶詰、レトルト食品が重宝される一方で、安らぎのため菓子や果物も多く求められました。生菓子は、避難所の配給で大変喜ばれます。(ただし、甘いパンはよく配給されるので飽きらます)数を揃えるのはたいへんですが、うまく運営できている避難所であれば子どもを優先するなど、不足しても按分してくれるはずです。果物は栄養バランスを取るためにも必要です。
次に、「衣」です。東日本大震災では、まだ雪の降る3月中旬だったこともあり、防寒着が求められました。このときは古着でも喜ばれました。本当に着るものが何もなかったのです。ただし、古着の下着だけは「あまりに被災者に失礼」としてSAVE IWATEに届いた時点で廃棄していました。結局、古着は大量に集まってしまい、あちこちの自治体、団体でも処分せざるを得なかったことは、皆さんご承知と思います。
なにより求められるのは、新品の下着です。男女ともに需要は高かったのですが、特に女性はサイズ、年齢による種類の違いが大きく、個々のニーズに合うよう、多様な種類を用意する必要がありました。
個々の事情に合わせた必需品と言えば、オムツや生理用品も重要です。特に幼児用おむつは成長に合わせて何種類も存在するので、ニーズに合わせたきめ細やかな支援が必要です。
「住」も重要です。避難所と言えば体育館などの固い床の上で生活するので、布団、マットレスは必須です。また、一か月後には大量の衣装ケースも必要とされました。増える支援物資=家財道具を収納するためです。意外と冷蔵庫や洗濯機などを備えていない、あっても足りない避難所は多く、さまざまな家電も求められました。
そして、忘れてはならないのが「遊」=余裕です。落ち着かない避難所生活で、いっときの楽しみを得るため、絵本、漫画、小説など様々な本が求められました。被災を免れた釜石市の書店では、震災直後本が飛ぶように売れ、あっという間に売り切れてしまったそうです。ただし、古本は厳禁です。古着同様、大量に残って処分することになりました。
子どもたちへは玩具だけでなく、お絵かきのための落書き帳や色鉛筆も喜ばれました。
1か月たつ頃には、多くの女性から化粧品がほしいとの声も上がりました。
被災地では生きることが第一と、生活必需品ばかりが必要と思われがちですが、心の余裕を持てるよう、避難所の中でも、できるかぎり被災前の生活を取り戻すことが、大切なのです。
支援の上で重視したのが、現地団体との連携です。市町村役場・社会福祉協議会・ボランティアセンターには現地調査の段階でつながりを作っていきました。
公的機関の手の回らないところをフォローするのが民間団体の一番の役割です。公設、私設かかわらず、多くの避難所を回り、御用聞き、あるいは飛び込み営業のように、支援メニューの提供をしていきました。こうした「御用聞き」は避難所ごとの、いわゆる支援格差を解消することにも役立ちます。1か月後からは地区の公民館や公園で物資配布会を行い、自宅に残っていた故に避難所経由の物資が届かない方々から、ニーズ調査をする機会としました。
避難所を回るうちに、炊き出しや物資募集をしている現地の民間団体とつながります。土地の事情に精通した彼らと情報、物資のやり取りをしているうちに、長く連携できる心強いパートナーとなります。
飛び込み営業ばかりでなく、人と情報の集まる拠点も作りました。
盛岡市内に物資の集積と配布のための拠点を開設すると、発災2週間ごろには、県内の支援団体や親せき宅へ物資を運ぶ個人の支援者が毎日のように来訪するようになりました。物資拠点の存在はあまり強力に広報できたわけではないですが、口コミの力で急速に知られていき、1か月後には沿岸被災地、内陸の避難所から個人、団体で続々と物資を引き取りにいらっしゃいました。こうした方々は物資配送の労力を肩代わりしてくれるだけでなく、貴重な情報、コネクションの源になります。
物資の余剰や滞留が危惧される今回の熊本地震ですが、物理的に生活を支えるという視点から一歩離れれば、人と人とを結びつけ、情報交換と交流を促進するという、支援物資のもう一つの役割が見えてきます。
今は、現地の状況に配慮しながら、情報交換と交流の手段として、上手に物資を活用する。そうした知恵が求められていると考えています。
寄稿:一般社団法人SAVE IWATE 会員 前田達明 氏