平成26年9月6日岩手県教育会館(盛岡市)にて開催された
「阪神淡路と東日本、二つの大震災の経験から学ぶ震災時のアスベストリスクと心のケアの今後」
(神戸大学論理創成プロジェクト主催)に参加しました。
2011年3月の東日本大震災から3年半、そして1995年の阪神淡路大震災からも20年が経とうとして
いますが、今の時点で考えられる震災以後の様々な課題と対策のうち、特に心身の健康にかかわる
問題のひとつとして「アスベストによる健康被害」の現状と報告、そして今後の在り方についての
意見交換が行われました。
岩手県内の支援団体からは、一般社団法人SAVE IWATEの阿部氏と特定非営利活動法人@リアスNPO
サポートセンターの川原氏より、震災直後からのボランティア活動について、発災直後の状況や被災地の
NPOとしての活動について報告がありました。
アスベストとは、熱、薬品、摩擦に強く、絶縁性や耐久性などに優れ、石油の様にひとつ
で多くの特徴を持つ天然資源として「奇跡の鉱物」「魔法の鉱物」と賞賛され、20世紀
初頭から全世界に広まりました。また軽量のため扱いやすく建築資材を中心に工業製品など
幅広い用途で重宝され、日本においても高度経済成長を支える天然資源として、かつては
3000種類もの製品にアスベストが使われていました。
しかし、アスベストは天然資源としてあらゆる製品に重宝されていましたが、作業中に
目に見えないアスベスト粉じんが飛散して人が吸入してしまう恐れがありました。
そしてこの数ミクロンの粉じん(髪の毛の5,000分の1)を吸うと針状のアスベストは
肺に突き刺さり、肺がんや中皮種、肺が繊維化してしまう肺繊維症(じん肺)という病気を
引き起こしてしまうのです。この肺繊維症(じん肺)はアスベスト粉塵を10年以上吸入した
作業員に多く起こる傾向にあり、作業から潜伏期間15~20年で発病すると言われています。
昔は、工場等の建物のほとんどに使用されていたというアスベストは、平成16年には
使用禁止とされました。通常使用では危険性は少ないそうですが、割ったり砕いたりすると
粉塵が出てしまい、潜伏期間を経て被害が出てきます。ですので、特に今回の東日本大震災
のような震災では、家屋倒壊や適切な対策をしないままでの解体作業による被害が心配され
ています。しかし、一刻を争う避難や復旧が求められる大災害発生時に、アスベストのリスクを
考える余裕はあまりないように思われます。さらに、アスベスト関連疾患は暴露の後に、
長い時間を経て初めて発症しうるという特徴を持つことからもなかなか震災とアスベストを
結びつけることは困難かもしれません。
ですが、今後予想される大規模災害への備えとして、平時から、アスベストに対する社会全体の
リスク認識を高め、そして、今回の東日本大震災の被災地でどういうことがあったのか、
何が足りなかったのかを記録し発信することが、重要なことであると思いました。